「たまにしか走らない」からこそタイヤウォーマーでタイヤの温度をしっかりあげよう

グリッド上でのタイヤウォーマー

 

タイヤウォーマー。

 

よくF-1やMotoGPで見かけるアレです。毛布のようなものを巻き付けて電気を流すことでタイヤを温めるものです。なぜタイヤを温めるのでしょう?

 

タイヤには、もっとも性能(=グリップ力)を発揮する設定温度があります。それはタイヤの種類によって異なります。

 

  • ツーリングタイヤは設定温度が低め
  • スポーツタイヤは設定温度が高め

 

タイヤは走ることで変形しその抵抗(ヒステリシスロス)で発熱します。

 

ツーリングタイヤは比較的低温度で性能を発揮できるシリカが配合されているため、走り出しさえ気を付ければ通常の走行で発生するヒステリシスロスにより必要十分な温度までタイヤを温めることができます。

 

対してスポーツタイヤ、特にサーキットを主眼として開発されているスパコルのようなタイヤは設定温度そのものが高く(50度~80度)ただ単に走行しているだけではなかなか設定温度までタイヤは温まりません。

 

設定温度に達していないスポーツタイヤはグリップしないだけではなく異常摩耗を発生させますから、サーキットのピットやパドックで「走行前にあらかじめタイヤウォーマーでタイヤの温度を上げておく」必要がある、というわけ。


ツキイチサーキットライダーでもタイヤウォーマーが必要なわけ

タイヤウォーマー装着

 

いやでもさ、プロレーサーや本格的にレース参戦している人が使うならまだしも、レースも出ないし1ヶ月に1回しかサーキットのスポーツ走行を走らない自分には縁が遠いもの・・・と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

冷えたタイヤを温める時間がもったいない

 

タイヤウォーマーを使用しない場合、それが冬であればコースイン後のかなりの周回数(私の経験からいえば5週)を走らないとタイヤの温度は上がらずグリップが立ち上がりません。その間の7~8分前後。

 

およそ貴重なスポーツ走行枠は20分~30分ですから、その1/3を無駄にするわけです。たまにしか走れないのにこれはもったいない!

 

冷えたタイヤで走ること自体が危ない

 

さらにその間、バンバン速度を上げてくる他ライダーにとってあなたは厄介な障害物(厳しい言い方でごめんなさい)。

 

冷えたタイヤは削れるのでもったいない

 

そして前述したように高価なハイグリップタイヤは温度が上がっていないと表面が溶けず、むしれるように削れていきます。

 

時間がもったいない、乗り手も危ない他ライダーには迷惑を掛ける、タイヤは減る・・・

 

タイヤウォーマーがなければそれだけのリスクを負うのです。

 

そうそう頻繁に走れないサーキットです、走行時間を有効にかつ安全に走りきるためにタイヤウォーマーの導入をぜひ、検討しましょう。お金で買える安心は、買うべき!貴重な走行時間を有効に使うために、怪我をしないために。


タイヤウォーマーの種類は大きく分けて2種類

タイヤウォーマーには大きく分けて2種に分割されます。

 

一つはニクロム線を使用したもの。もう一つは面状発熱体を使用したもの。特徴をまとめてみました。情報ソースは私と私の周囲の口コミです(笑

 

価格 遠赤外線効果 走行可能な温度への到達時間 修理
ニクロム線 2~3万円台 極小 1時間前後 自分で修理可能
面状発熱体 5~10万円台 30分以内 メーカー修理可能

 

価格さえ目をつぶれば(笑)、面状発熱体を使用しているタイヤウォーマーに軍配が上がります。が、実際にサーキットで走行すると

 

  • サーキットに到着してから1本目を走るまでの時間
  • 走行と走行の間

 

は大抵1時間は開いています。ですから、早め・こまめにタイヤウォーマーを掛けることで、ニクロム線タイヤウォーマーでも十分にその効果を発揮することができます。

 

とはいえ、本格的にレース参戦することになれば話は別。

 

急な降雨などのコンディション変化に対応するためにはできるだけ早くタイヤを温めることが結果につながる場合ももちろんあります。あなたがそういう世界を目指しているのであれば、もちろん面状発熱体タイヤウォーマー一択!

タイヤウォーマーお勧めは?値段で決めるならクレバーライト:ZiiX

圧倒的安さで比較的ライトなサーキットライダーに人気があるのが、クレバーライト:ZiiX。無印モデルと、Type-D(デジタル)の2種類があります。

 

以下、すべてフロント120/リア140のデータです。

 

クレバーライト:ZiiX タイヤウォーマー【無印】 クレバーライト:ZiiX タイヤウォーマー【Type-D】

CLEVER LIGHT クレバーライト/ZiiX タイヤウォーマー(17inc-140/160)CLEVER LIGHT クレバーライト/ZiiX タイヤウォーマー(17inc-140/160) 汎用


CLEVER LIGHT クレバーライト/ZiiX タイヤウォーマー【Type-D】:17インチCLEVER LIGHT クレバーライト/ZiiX タイヤウォーマー【Type-D】:17インチ 汎用

 

無印 Type-D
発熱体 ニクロム線 ニクロム線(高密度)
現在温度表示 ×
任意温度設定 ×
温度管理 サーモスタット デジタル制御
サイドウォール × ×
消費電力 780W 780W
保証 1年 1年
修理 ×(補修用に前後ばら売り設定あり) ×(補修用に前後ばら売り設定あり)
市場価格

Webike:23,760円(税込)


Amazon:取り扱いなし

Webike:37,260円(税込)


Amazon:取り扱いなし

 

  • メリット:圧倒的な安さ
  • デメリット:メーカー修理不能(ただし補修用として前後片方だけでも購入可能)

 

ミドルクラス用の17インチ(フロント110~120/リア140~160)で、2~3万円台。他製品が5万円以上するのでまさに半額。安価ですが必須機能は揃っており、特にType-Dならばなんら不満はないでしょう。

 

初めてのタイヤウォーマーとして、月イチレベルのサーキット走行としては最適。

 

ちなみに、ニクロム線構造のタイヤウォーマーは単なる断線であれば自分でばらして修理することも可能です(自己責任でお願いいたします)。そういう面でも、お財布にやさしいタイヤウォーマーです。

タイヤウォーマーお勧めは?信頼性で決めるならバトルファクトリー

信頼の日本製、そして3年の保証と細かい修理メニューを持つことでライダーの信頼を勝ち得ているのがバトルファクトリーのタイヤウォーマー。

 

バトルファクトリー タイヤウォーマー


バトルファクトリー BATTLE FACTORY/タイヤウォーマー

バトルファクトリー BATTLE FACTORY/タイヤウォーマー

 

Webikeの口コミ評価でも「アフターサービスが良い」というコメント多数。後述する炎上事件で原型をとどめないくらい燃えたタイヤウォーマーでも修理してくれたという事例あり。

 

ニクロム線構造ではありますが複数本(3本)のニクロム線を高密度に組み合わせることで、いわゆる「安物ニクロム線タイヤウォーマー」とはレベルの違う性能を誇ります。温度管理もサーモスタット(物理的に電源のオン・オフを繰り返す仕組み)ですが、その制御温度は細かく「温まったタイヤの保温」性能も高いのです。

 

青と赤の鮮やかなカラーをサーキットのパドックでよく目にします。大きなサイドウォールフラップも特徴、冬場でもよく熱が入ります!

 

以下、すべてフロント120/リア140のデータです。

 

無印
発熱体 ニクロム線(高密度)
現在温度表示 ×
任意温度設定 ×
温度管理 サーモスタット
サイドウォール
消費電力 810W
保証 3年
修理
市場価格

Webike:66,960(円(税込)


Amazon:取り扱いなし

 

  • メリット:品質のよさ、アフターサービスは口コミ評価良好。修理メニューも幅広い。高密度ニクロム線の立ち上がりは良好。
  • デメリット:微妙に高い

 

シェアは恐らくトップクラスのバトルファクトリー。海外製品が多いタイヤウォーマーの中、この製品は日本製でありかつ3年と他製品より長い保証。安い買い物ではありませんからこのサービスの良さは高評価です。私のレース仲間も使用しています。

タイヤウォーマーお勧めは?消費電力と性能で決めるならGetHot

対して、いわゆるバリバリ系のサーキットライダーが集う草レースのピット・パドックでよく目にするのがGetHot。

 

GET HOT タイヤウォーマー GP-MASTER GET HOT タイヤウォーマー GP-FACTORY


GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-MASTER

GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-MASTER


GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-FACTORY

GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-FACTORY

GET HOT タイヤウォーマー GP-EVOLUTION GET HOT タイヤウォーマー GP-MAX


GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-EVOLUTION

GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-EVOLUTION


GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-MAX

GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-MAX

GET HOT タイヤウォーマー GP-EVO R


GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-EVO R

GET HOT ゲットホット/タイヤウォーマー GP-EVO R

 

サイドウォール側に深くフラップが伸びており、深くタイヤを包み込むのも特徴です。

 

ニクロム線の6倍の発熱量を持つ「遠赤外線面状発熱体」を使用しているのが大きな特徴です。断線は発生しない、とのこと。

 

特徴的なファイヤーパターンのタイヤウォーマーはピットでもひときわ目立ちます。ラインナップは幅広い、全部で5種類。

 

以下、すべてフロント120/リア140のデータです。

 

GP-MASTER GP-Factory GP-EVOLUTION GP-EVO-R GP-MAX
発熱体 遠赤外線面発熱体 遠赤外線面発熱体 遠赤外線面発熱体 遠赤外線面発熱体 遠赤外線面発熱体
現在温度表示 × × ×(オプション)
任意温度設定 × × ×(オプション)
温度管理 サーモスタット サーモスタット サーモスタット デジタル制御 高機能デジタル制御
サイドウォール
消費電力 670W 700W 780W 780W 780W
保証 1年 2年 2年 2年 2年
修理
市場価格

Webike:57,286円(税込)

 

Amazon:取り扱いなし

Webike:66,376円(税込)

 

Amazon:取り扱いなし

Webike:78,429円(税込)

 

Amazon:取り扱いなし

Webike:78,429円(税込)

 

Amazon:取り扱いなし

Webike:116,640円(税込)

 

Amazon:取り扱いなし

 

  • メリット:遠赤外線面発熱体による素早い(15分)立ち上がり・省電力、廉価版のサーモスタットも2度単位のオンオフ制御
  • デメリット:やはり高い、とても高い

 

価格は高め(というか高い)ですが、サーキットのパドックでよく見かけるだけあって性能、作り、サポートともに一級品。ニクロム線とは一味違う熱の入り方、大きなサイドウォールフラップも「レースをよく知った」作り手によるプロデュースであることがわかります。

 

消費電力の少なさも、遠赤外線面発熱体の大きなメリット。GP-MASTERであればその消費電力はわずか670W。一般的な発電機、例えばヤマハ発電機EF900FWのような非インバータの安価な発電機でも十分に利用できます。

 

価格と性能のバランスからいえば「GET HOT タイヤウォーマー GP-EVOLUTION」がお勧め。憧れです、欲しいですねえ。

激安でタイヤウォーマーを手に入れる裏技

先に書いておきますがネット等で売られている激安タイヤウォーマーは手を出さないほうが無難です。

 

  • 温度が上がらない
  • サーモスタットの制御が悪く上がった温度を維持できない
  • 燃える

 

等のリスクがあります。ではどうやって安く手に入れる?

 

ヤフオクなどを注意深く見ていると、タイヤウォーマーの「片割れ」、つまりフロントのみ・リアのみがかなり安く出品されています。当然両方揃って一式、ですから底値で片方3,000円程度の掘り出し物が見つかる場合もあります。これを前後それぞれバラで揃えることで(まあ、メーカー違っててもいいでしょう)激安で購入できるチャンスがあるというわけです。

タイヤウォーマーを使用する上での危険性・注意事項

タイヤウォーマーは取り扱いを間違えると大変な危険性があります。

 

それは火災。主な原因は以下の2つ。

 

タイヤからタイヤウォーマーを外した際に電源を切り忘れた

 

これ、よくあります。「タイヤに巻いた状態」で80度近くまで加熱する能力がありますから、タイヤウォーマー単体で何にもまかずに電源を入れておくとあっという間に危険な温度まで上昇します。

 

スポーツ走行開始3分前!身に着けた装具を再チェックしてタイヤウォーマーを外し、スタンドからバイクを下ろしてさあ行くぜ!気分アゲアゲだぜっ!というあわただしい時、ついついタイヤウォーマーのコードを抜き忘れた・・・。

 

サーキットを楽しく走って帰ってきたらパドックで煙が!

 

これをやってしまった方、実在します。このケースでは他のものに引火しなかったため大ごとにはなりませんでしたが(コントロールタワーに呼び出されこっぴどく怒られたそうです)、パドックには可燃物の代表格であるガソリンやオイルがあります。ホント一歩間違えば大惨事、ですので

 

  • タイヤウォーマーの電源切り忘れ

 

はくれぐれもご注意を。具体的には

 

タイヤウォーマーを取り外したらそこらにぽいっと置かないで、きちんとクルクル巻いてコードも巻いてしまう

 

ことを習慣づけることでこの事態を防ぐことができます。結構、ほうり投げ出されたタイヤウォーマー、あちこちで目にします・・・。

 

レーシングスタンドではないメンテナンススタンドを使用した

 

なんのこっちゃい?と思われるかもしれませんが・・・。

 

最近、中華製と思しき格安のメンテナンススタンドが売られています。この手のメンテナンススタンドは強度が乏しく、使用しているうちにアームが曲がりタイヤと地面の隙間が減っていくものがあります(特にフロントスタンドで発生)。

 

この状態でタイヤウォーマーをタイヤに巻いて加熱すると、地面とタイヤウォーマーが接触し底に熱がこもり、焦げる・発火する可能性があります。

 

タイヤが低いほうがメンテナンススタンドを上げやすい、ですがタイヤウォーマーの使用には向きません。危険です。ちなみに有名メーカーのメンテナンススタンドにはそのようなことはありませんので、ご安心ください。

 

タイヤウォーマーを使うならタイヤと地面に十分なクリアランスがあるメンテナンススタンドを使用する

 

ことをご留意ください。

まとめ

Ducatiのフルバンク

 

タイヤウォーマーはトップレーサーのためのものだけではなく、むしろ我々のような怪我のできないサンデーレーサーにも必要な装備です。

 

プロテクター類とともに「安全にスポーツ走行をするために」可能な限り使用することをお勧め致します。

 

まあタイヤウォーマーを使用するということは

 

 

を使用するということで、ということはトランポも必要となってしまうのですが・・・ここは腹を決めて(笑)サーキットランを楽しみましょう!

 

以上、タイヤウォーマーはたまにしか走らないサーキットだからこそ必要だ、ということでタイヤウォーマーの選び方をまとめました。


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