まずはマシンの洗浄から。

腰下から、オイルがにじんでいるようです。

 

アイドリング時からすでにジワリジワリとオイルがにじんできます。筑波サーキットツーリストトロフィー3月場所の予選走行中、白煙を指摘されそのままリタイヤとなったあと、根本解決のために腰下オーバーホールを決意します。

 

よく、「エンジン以外はバラせるんですが」

 

なんて言葉、聞きますよね。でもエンジンだから大変、はあるとしてもサスペンションだから簡単、て事はないはず。

 

一通りの工具とサービスマニュアルはすでに用意されています。縦割りクランクケースエンジンの分解は初めてですが、チャレンジしてみましょうか。

 

まずはマシンをできるだけキレイにしておきましょう。特にエンジン下部のオイル汚れは入念に洗浄しておきます。


出来るだけエンジンを軽くします。

エンジンを下すやり方はいくつかあります。

 

今回は、どうせ全バラになりますから、「できるだけ分解しながら降ろす」方法を取ります。

 

外せるものは

 

  • キャブレター
  • ヘッド一式
  • シリンダー
  • ピストン
  • ドライブスプロケット
  • 左右エンジンカバー
  • クラッチ一式
  • フライホイールマグネット
  • オイルポンプ等
  • シフトリンケージ

 

あたりです。どんどんはずして、各パート毎にトレイを分けてパーツを無くさないようにしまっておきます。

 

必要な特殊工具は

 

  • サークリッププライヤ
  • フライホイールプーラ

 

くらいでしょうか。サークリッププライヤは特殊工具じゃないか。

 

あれがああなって、これがこうなって。よく配置を記憶しつつ、デジカメで画像をあちこちの角度から取っておきましょう。YAMAHAのサービスマニュアルはなんというかプロ向けというか、それだけ見てもどーしても組めないことがあります(私のスキル不足かもしれません)。組み付け状態の観察は重要ですよ。

 

この際、それぞれのパーツの状態をチェックして、交換するパーツにあたりを付けておきます。

 

ガスケット類は利用状況に応じて(私はヘッドガスケットも2回までは着脱しちゃいます。意外と見落としがちなのがサークリップ類。特に小さいサークリップは1回外すとすぐ伸びてテンションが落ちちゃって使い物にならなくなります(言い換えると装着する際に無理するとすぐダメになる)。

 

まあ、緊急作業の場合(ピット修理の場合など)はこれをペンチでギュッと縮めて入れちゃう場合もないではありませんが、普段からそんなリスクを背負い込む必要なんてありませんよね。


取れるものは取れた・・・かな?

ここまで分解すると、かなり軽くなります。

 

つまり一人でエンジンを降ろすことが可能になります。え、ここまでバラさなくたってSRX250のエンジンなんて軽いでしょ、と思います?まあそうなんですが(笑

 

ここまで分解する理由は、どうせバラすんだからという理由以外に

 

腰の保護

 

も理由ですし(いや、腰ホント大事ですよ)、

 

フレームに積んである方がトルクの掛かったネジを緩めやすい

 

ということもあります。

 

ちなみに私はエンジンを降ろして開ける等、大量のボルトを緩めるときは「電動インパクト」を愛用しています。充電式ですと大事なところでトルクが落ちてイライラしちゃったりしますが(なにしろサンデーレーサーは時間ないからね)、有線電動インパクトはトルク落ちを心配せずに作業に集中できます。

 

超お勧めです。

 

エンジン前方上下、エンジン後方上下のエンジン取り付けボルトを緩めて抜いちゃいます。

 

抜いたら・・・


ゴロリ。

全てのエンジン取り付けボルト(こんな細くていいのかなって思いますよね)を外したら。

 

エンジンを上側に持ち上げつつ、フレームにこすらないように丁寧にフレームから抜き取ります。まあ250ccシングルですし取れるもの取りまくって軽くしてますからたぶん大丈夫です(?)。

 

あ、SRX250のサーキット専用マシンの場合、エンジン持ち上げてからストレーナー側のワイヤリング(オイル抜く際にはここは外さない)を切るのを忘れてオットット、とならないように注意です(経験者は(略)。

 

取り外したエンジンは落とさないように丁寧に、あらかじめ用意しおいたスペース(段ボールでいいです)の上に、静かに置きましょう。

 

さて、料理開始だ。


いきなり全バラクランクシャフト取り外し。

写真が飛んでいてゴメンナサイ、もうクランクケースは分離してあります。

 

ただ、SRX250のケース分割、特に初めてケースを割る場合は要注意です。クランクケース左右を締結するボルトが、「プラスの鍋ネジ」なんです!どういうこと?

 

プラスの鍋ネジは舐めやすいんです・・・。しかもクランクケースを締結しているくらいですからがっちり締まってますし、更に長期間いじられていませんから固着してる可能性が大きいです。

 

なので、ここは最初から「ショックドライバー」で叩きながらネジを緩めましょう。転ばぬ先の杖です。

 

万が一舐めてしまったら・・・。躊躇せず電動ドリルに7mmのドリルを咥えて鍋ネジの頭の中央(舐めてるからすり鉢状の凹みができてるはず)から垂直にドリリング、頭(鍋部分)を削り飛ばします。

 

難しくありません、びゅーーーーーーーっと回さずにびゅーっ、びゅーっ、びゅーっ、っと断続的にドリルを回していればポロリと頭が取れます。

 

頭が取れれば部品は外れます、残ったスプライン部分をバイスプライヤーで掴み回せば、頭が外れてテンションが抜けたボルトは簡単に緩みます。

 

ケースを締結しているボルトをすべて外したら、サービスマニュアルに記載されている凹みにマイナスドライバー等を突っ込んで少しずつ、均等にこじります。

 

ケースを開けたらギアユニットをごっそり抜き取り、クランクシャフトプラーでクランクシャフトを抜くとはい、全バラ完了!

 

 

・・・写真少なくてゴメンナサイ。夢中で作業してたの。

 

ここで必要な特殊工具は

 

  • ショックドライバー
  • バイスプライヤー
  • クランクシャフトプラー

 

です。

 

まあ、ショックドライバーもバイスプライヤーも特殊工具ではありませんが、このサイトでは皆さんが持っていないかもしれない工具はすべて特工扱いとします。

 

で、このクランクシャフトは芯出し加工へ出すのです。


さて、オイル漏れ原因は・・・。

さあ、腰下が(というか、上もですね)全バラできました。

 

当初の目的の(忘れかけてた?)オイル漏れの原因を探ります。ケースをいったん洗浄して丹念に眺めることしばし・・・あ、これだ。

 

左側ケース前方、セルモーターの裏あたり。

 

左右の赤い線の間にあるヘアクラック、見えますか?

 

手を掛けてぐっと力を入れると隙間が僅かに空きます。これだこれだ・・・。


亀裂は続くよどこまでも。

そしてそのクラックはクランクシャフトベアリングまで到達し・・・


クランクケースのフォッサマグナやぁ~

なんということでしょう。

 

クランクベアリングハウジングを「貫通」して、ボルト穴で止まっていました。

 

一体何が起きたんでしょう・・・。

 

恐らく、ですがエンジンマウントボルトが緩んでいた等で振動が増幅したのではないか?と推察いたします。実はお友達のSRX250でも、同じ現象が発生した事例があるんです。


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